ペット(英語:Pet)とは、一般的には愛玩を目的として飼育される動物のこと[1]。愛玩動物(あいがんどうぶつ)とも呼ばれる。
広義には、動物に限らず、日常生活で飼育される生物全般のことを指す。
ペットは、人の心を和ませたり楽しませてくれる、といった理由で人が飼っている動物のことである。人はペットとの様々なやり取りを楽しんだり、その姿や鳴き声などを鑑賞したりする。
ペットの歴史は古く、ネコは古代エジプトの時代から現在のペットのような位置づけや、鼠の駆除などの実用目的でで飼われていたことが推測されている。また犬に関しても、太古の昔から、実用と愛玩目的も兼ねて飼っていたことが推測されている。(→#ペットの歴史)
ペットは人間の日々の生活にかかわりのある動物なので、人間の生活サイクルに対応できる動物が好まれ、また人の生活と干渉し合わない動物を好む人もいる。
ペットは生命をもった生物であり、単なるモノとは異なり、栄養や環境など様々なことにそれなりに配慮する必要がある。人はペットの生存のためにエサを用意したり、ケージ、小屋、ベッド類などを用意するなど、様々な世話をする必要があり、その意味でペットは野生動物とは異なって人間との相互関係の中で生活している。
日本でペットを飼育する者は、動物の虐待の防止や公衆衛生の観点から、「動物の愛護及び管理に関する法律」や「狂犬病予防法」などの法令により定められた義務を負う。
ペットを飼うことで、飼い主は癒し、孤独感の解消などが得られる。また愛情や思いやりの心などが育つなどの情操教育の効果もあるとされる。ペットは広い意味での飼い手の人生の質の向上に貢献している。(→#ペットがもたらすメリット)
ただし、ペットを飼うことに伴う様々な責任や困難を理解せずに飼ってしまうと、近隣や周囲の人々に迷惑を及ぼし、またペットそのものに害を及ぼしすこともある。ペット飼育の入門書などでは、飼い主には飼い主としての良識やマナーや責任が求められている、と記述されたり、「マナーを守って上手にペットとの生活を楽しみましょう」といったことが記述されていることが多い。また、「一度飼い始めたペットは人間の都合で放棄してはいけません」「ペットは放棄できないというくらいの覚悟で飼いましょう」「命に対して責任を持ちましょう」といったことも書かれている場合がある。最近では動物愛護センターでも、飼い主に対してそうした説得を行うところも現れている。(→#ペットにまつわる諸問題)
ペットを飼うには様々な方法があり、公共の収容センターなどの里親募集に応募する方法のほか、知人のつて、ペットショップなどで購入するなどの方法がある。(→#ペットの求め方)
[編集] 関連用語・関連概念
近年では人々の動物に対する接し方が、より細やかで密接になる傾向があり、それを反映して「ペット」という概念(モノや所有物のように見なす概念)に替わって「コンパニオンアニマル」(人生の伴侶としての動物)という概念も普及してきている。
このほか、単なる労働力を超えて人間の生活を補助する動物もあり、例えば介助犬や身体障害者補助犬や介助猿など、介助動物と呼ばれる動物もいる。
労働力ないし動力として使役したり、食料を得たりするなどといった実利を求めて飼育する動物に関しては、家畜と呼ぶことが一般的である。ただし、一般には家畜とされている動物であっても、これを愛玩している人々も一定数おり、ペットと家畜の境界の引き方は、その動物に対する人間の側の態度・心情によるところが大きい。
[編集] ペットの歴史
ペットと家畜(実用的な理由に拠るもの)の歴史は古く、狩猟において助けとなるイヌや、農耕において害獣となるネズミなどを駆除してくれるネコやイタチのような小型肉食獣が珍重されていた。
良いあらいぐま犬を作る方法
[編集] 古代 - 近代
特にイヌの場合は、はっきりした主従関係を好む習性から、家族の一員として扱われた歴史が長いとされる。石器時代におけるイヌの墳墓(埋葬に際して添えられたと見られる花の花粉が見られたり、なんらかの食料の残骸が一緒に発見されるなどの特徴も見られる)も発見されている。その一方で、所有物という概念もあったようで、殉死によって飼い主と共に埋葬されたと思われるケースも見られる。欧米では、古来から現代まで王侯貴族や歴代大統領から一般市民の間で愛玩用、護衛用、狩猟用などとして飼われている。英王ジェームズ2世や米大統領クーリッジなど多数の愛犬家がいる。
猫科の動物は古代エジプトにおいて神格化されたせいもあって、高貴な身分に相応しい愛玩動物として扱われ、実用的な用途よりも、より今日のペットに近い存在であったとされる。丁寧に埋葬されたネコのミイラも発見されており、同時代に於ける同種動物の地位が如何に高かったかを感じさせる。また農耕文化にも関連して、ネコやイタチ・キツネのような小型動物を捕食する肉食獣を、穀物を食害から守る益獣として珍重していた文化が世界各地に見出され、好んで保護され飼育されていた事情が見られる。今日の米国でも納屋に住み着くネコを「barn cat」と呼び珍重するなどの風習も見られる。
古くは家畜とペットの境界は曖昧で、飼育する側の社会的地位によって、その境界は更に曖昧な物であった。今日では多くの国で愛玩用または訓練されるイヌであるが、日本でも平安時代までは一般的な食用動物として見なされていた。しかし法令や宗教的な理由から獣肉を食べる習慣が日本では次第に廃れたことから、今日の日本ではイヌを食用と見なす習慣はない。しかしそのような過程を経なかった国では、今日でもイヌは食用家畜とみなされており、イヌを食べる習慣の無い国から、非難・中傷されるなどの社会現象が発生している(犬食文化の項を参照)。ネコを食用家畜として食べる国もある。
[編集] 近代 - 現代
現代の日本の2人以上の世帯においては、48%の世帯が、何かしらのペットを飼っている、という調査結果がある[2]。同じく現代の日本(2003年7月時点)における飼育ペットの割合は犬62%、猫29%、魚類11%、鳥類7%(複数回答)となっており[3][4]。鳥類(1981年時点で35%)の減少傾向が目立っている。
今日ペットは、家族として、パートナーとして、仲間として人の暮らしに密接に関わり、心を癒してくれたり、あるいは愛玩されたり、共生するなど、様々な面を持った存在である。
近年では、生命全般を大切にする思想も普及してきており、動物であっても無下に扱う事を忌避する人々は増えている[5]。動物を尊重する人々の中には、ペットの性別を「オス」「メス」ではなく「男の子」「女の子」と呼んだり、「餌をやる」ではなく「食事をあげる」と表現するなど、言葉の用法に人間との同一視が見られるケースもある。ペットの家族化が進んでいる。中にはペットに遺産を残したいと望む人もいる [6]
ペットを、ペットをひとつの命として尊重する人々と、ペットをただの玩具や装飾品のように考える人々との間で軋轢が生じることがあり、時には係争関係に陥るケースも見られる。
[編集] ペットの求め方
ペットの求め方としては、公共の収容センターで里親を募集している案件に応募する、市民が運営している里親募集のウェブサイトで写真を見て選び応募する、ペットに子供が生まれそうな知人に声をかけておき入手する、ペットショップで購入するなどの手段がある。イギリスやドイツなどでは、収容センターなどの動物を捜す場合が多い。
あくまで純血や血統書つきの動物などにこだわる人などはペットショップに展示されている証明書つきの個体を購入することを好む場合もある。
イギリスでは、ペットを飼いたい人は、施設などに保護されている動物の里親募集などの情報を探し、そこから選ぶ。イギリスでは、施設に保護された犬・猫が引き取られる率は8~9割ほどに及んでいるとされる[7]。
オカメインコの世話をする方法
また、アメリカでは生後60日前後までの仔犬の店頭展示販売は禁止されている[8]。イギリスでは、子犬の日数にかかわらず、店頭展示販売は禁止されている[8]。
また、店頭で展示販売されるペットの価格には、店の運営費や中間コストが上乗せされており、高くなってしまっている[8]。飼い主の出費を抑える(安く手に入れる)という観点からも、収容施設などで里親を募集しているペットを引き取ることにはメリットがある。
日本でも、動物の命に配慮し、できるだけ施設に収容されているペットを引き受けることを優先するべきだ、ということが言われるようになってきている。日本全国の公共の動物収容施設(動物愛護センターなど)では、犬や猫の新しい飼い主を募集している
「#日本で起きているペットの安易な大量殺処分」も参照
[編集] ペットがもたらすメリット
ペットを飼うことの長所は癒し、孤独の解消、世話をする事によって(飼う側の人間に)育まれる興味や思いやりの心等が挙げられる。 ペットを飼うことが、子どもの健全な心を育てることもわかっている[9]。
[編集] ペットにまつわる諸問題
[編集] ペットへの配慮の欠如
[編集] ペットの安易な大量殺処分
ペットの扱いには国ごとに差異がある。例えば、ドイツでは殺処分は行われていない[10][11]。またイギリスでも、収容された犬・猫の8~9割程度は、里親募集などの制度により新たな飼い主を見つけることができている。イギリスでは、犬や猫を飼う場合、施設に保護されているペットたちの里親(新しい飼い主)募集の情報を探し、そこから選ぶように努めているとされる[12][13]。DOG TRUSTなどの動物愛護団体が活動しており、殺処分は極力行わず、新しい飼い主が現れるまで、一生涯飼い続ける[13]。
日本では、保健所が街でうろついている犬などを日々捕獲・収容したり、飼い主から直接持ち込まれた動物を収容し、数日の保護日数で殺しており、その数は毎年45万匹にも及ぶが、保健所で保護された動物の殺処分率の高さは近年問題になった。
そのため、安易に殺処分を行わない施設もあり、例えば、熊本市動物愛護センターは、動物愛護の目的のために、あえて"嫌われる行政"になることも辞さず、ペットを施設に持ち込みペット放棄しようとする飼い主に対し翻意を促すための説得を行い、市民団体や獣医師会と連携しつつ、より多くの人々を巻き込んで(施設に入れられたペットの)譲渡会を開催したり、収容された犬の情報をウェブサイト上で積極的に公開するなどの取り組みを行った。例えばウェブサイトでは、里親を募集している犬や猫たちの写真を閲覧可能にした[14][15]。それらの方法の効果により、2002年度の段階では56.38%であった処分率を、2008年度には12.86%にまで引き下げることに成功した[11]。こうした成功事例が知られるようになり、「熊本のようにやる気になりさえすればペットの命が救えるのに、なぜ他の自治体では同様のことをやろうともせず問題を放置するのか?」という声が出るようになった。
環境省は、2009年度より、犬や猫の殺処分の半減を目標に、新しい飼い主探しを促進するための施設を、都道府県(や政令市に)、年間約10 カ所整備する計画を、また2017年までに90 カ所整備する計画を立て、それに着手した。9年間で、殺処分の数の半減を目指すという。新しい飼い主探しを促進するための施設整備などを行うという。また、ペットの不妊手術の推進や、(ペットが迷子になってしまった時に飼い主のもとに戻ることができるように)マイクロチップ装着なども推進するという[11]。
全国の動物愛護センターなどでは、犬や猫の新しい飼い主を募集している [2]。
[編集] 無理な繁殖や近親交配
珍しい種類や人気がある種類の犬・猫では、ブリーダーが近親交配による繁殖を行うといったケースも報告されている。それらの中には近親交配によって発生した、畸形や遺伝的な異常を持つ個体が販売され、飼い主とペットショップの間で品質面の問題が係争されるなどの現象も起こっており、これを憂う向きもある。しかしながら、近親交配は品種改良や品種のスタンダード維持の重要な手段でもあり、一律禁止は大きな弊害を伴うとされる。
[編集] 闇取引
珍しい動物を飼いたいという人がおり、この中には密猟によって捕獲された動物が安易に密売買されるケースも少なくない。野生のオランウータンはワシントン条約で商取引が禁じられているが、これすら売買していた事例もある。
幼い内に親から引き離されペットとして違法に飼われていた個体が再び森に帰れるよう、リハビリを行っている団体もあるが、本来はオランウータンの生態を研究するために生息域に滞在している研究者のところにこれら個体が持ち込まれ、研究者らが自然環境への復帰作業に動員されてしまい、研究が滞ってしまうケースもあるという。
また動物園などから珍しい動物が盗難に遭うなどの事件も発生しており、盗んだはいいが飼い方が判らず(情報も無いため)死なせてしまうといった事件も起きている。日本においては2003年にレッサーパンダなどが盗まれ売買された事件も発生している(3ヵ月後に発見され戻された)。
[編集] ペットの健康問題
ペットをその性質に即した飼い方が成されていない場合も少なくはない。例えば肉食性の動物に、菜食主義者の飼い主が野菜を主体とした餌を与えて、適切な消化酵素を持たないこれら肉食のペットが健康被害を受ける場合も見られる。 中には、偏食となるエサを与えてしまう飼い主がおり、結果として糖尿病などの成人病的症状で動物病院に通院するペットがいる。よく懐いている犬の場合、飼い主が与えた餌を食べると飼い主が喜ぶことを犬が理解して、満腹であっても飼い主を喜ばせようと餌を食べる場合が見られる。これらの犬は肥満に陥ったり、肥満が引き起こす健康被害を受けることもあるとされる。
また、過度に愛玩された結果として神経性の円形脱毛症や胃潰瘍に陥るペットもいる。また、飼い主が自分のストレス解消や鬱憤晴らしに行う動物虐待の被害を蒙る場合もある。
[編集] 野生化
ペットを物品のように扱い、「飽きたから捨てる」という考え方をする者の存在により、飼い主がこれら動物を野に放ち帰化動物を作り出してしまうという問題も、世界各地で発生している。アメリカでは、1960年代に二重純血犬種のペットブームがあったが、やがてそのブームが去ると二重純血犬種の犬が各地で捨てられ、捨て犬が急増して大問題となった。
日本においても、1977年に放映されたアニメーションテレビ番組「あらいぐまラスカル」の影響でアライグマを飼う家庭が出たが、本来非常に気性の荒いこの動物は飼育は難しく、飼育できず処分にも困った飼い主が、結局捨ててしまうケースも発生。一部地域では野生化したアライグマがゴミや農作物を食い荒らすなどの被害も発生している。
東京都には野生化したワカケホンセイインコが大量に住み着くなどの現象も確認され、温排水が流れ込む用水路でワニが、路上でカミツキガメが保護されたとするニュースが度々聞かれるなど、芳しくない現象が発生している。
[編集] 周囲の人々に対する配慮の欠如
ペットの飼い主は、周囲の人々への配慮も求められている。
近年、店舗や公共交通機関にペットキャリーにすら入れずにペットを連れ込む飼い主が少なからず存在する。またキャリーに入れたとはいえ、公共交通機関で手回り品切符の購入をしていない事もある。この様な事例は、周りの人が不快に思ったり、特に小さい子供などが動物を怖がることがあるばかりでなく、動物アレルギーの人にとっては健康にもかかわる。「ペット同伴禁止」と明示されている場所にはペットを連れ込まない、ということは飼い主が守るべき当然のマナーであるとされている。さらに、特に表示が無くても、(よほどペットのための施設でない限り)不特定多数が出入りする施設や店舗など公共の場では、必要に応じてケージ等に入れ、他の人がいる場でペットが自由に動き回ることのないようにするのが飼育者� ��求められているマナーとされる。
ペットが周囲の人に与える被害が民事・刑事の裁判沙汰になる例もある。なお、軽犯罪法では、犬などを嗾(けしか)けるなどして他者に危害を与えた場合などは当然罰せられる。現行法上では、ペットはあくまでも飼い主が所有し管理する対象であるため、飼い主には、これに起因する損害・損失に対する補償するなどの責任も発生するわけである。また、人間に危害を加える虞のある鳥獣を逃がしたりすることも罰則対象である。
[編集] 伝染病など
この被害は飼い主自身のみならず周囲の人々に及ぶ場合もある。
近年では、輸送技術の発達に伴い、様々な動物(特に野生動物)がペットとして供されるが、この中には伝染病の病原体を持つ動物が含まれることもある。又、動物の持つ寄生虫の影響も懸念されている。2000年代には、日本においてはほぼ根絶されたと思われていた狂犬病が、輸入ペットの中から見つかり大きな問題となっている。南米では、近年人気のあるハムスターから、狂犬病ウイルスが発見されたというニュースが報じられたことがある(日本では輸入されていない)。また、噛み付くなどといった危険な習性を持つ爬虫類などが飼い主に危害を与えてしまうこともある。
[編集] 国ごとの対応
[編集] イギリス
- 動物の飼養や利用に関連する法令は70以上[16]
- ペットの店頭展示販売禁止、12歳以下の子供へのペット販売禁止
- RSPCA(王立動物虐待防止協会、Royal Society for the Prevention of Cruelty to Animals)という動物保護団体がある
- 動物取扱業は免許制
[編集] アメリカ
- 生後60日前後の仔犬の店頭展示禁止
- 動物取扱業は免許制
[編集] ペットの種類
- 植物は従来、園芸によって育まれる物だったが、近年では愛玩する対象としても扱われるため、広義のペットと見なされるケースがある。
- 人間が人間を「飼う」というのは人権や人道に絡んで倫理上問題視される要素を含むものの、風俗的な観点からはそのような現象も見られる。また、奴隷制度は人間の家畜化であるが、目的が「愛玩」であればペットと見なす事も可能である。ただし近年に於いてその大半は仮想上のものや、有償や無償のサービスであったり、または犯罪行為のいずれかである。
[編集] ペットを取り上げたフィクション
[編集] 参考文献
- B.ガンター、安藤孝敏、金児恵、種市康太郎 訳 『ペットと生きる』ペットと人の心理学 北大路書房 ISBN 4762825034
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