犬から見た世界 (3) - 子犬の社会化とは何か(前編)
史嶋桂さんが掲載中のブログから、ご本人の許可を得て、
共感する部分、興味が有る部分を抜粋してご紹介を致します。
史嶋さんの記事をご紹介する理由
今回は、「仔犬の社会化」から抜粋のご紹介です。
うちの犬舎は、犬を熟知しているお客さま(訓練所や犬舎のプロ)以外には、「早くて生後3カ月、理想は5カ月」くらいを目安にして、仔犬をお客様に手渡しをしております。
仔犬探しでペットショップ回りをしてきたお客様は、「2カ月目位の可愛いうちに受取りたい」と希望されますが、「きちんと犬が出来上がってから、持って行った方がいいよ」とブリダーは説明をして出来る限りお断りをしています。
どうして4〜5カ月が理想か。予防接種だけではありません。ブリダーが言う「きちんと犬が出来上がる」と、同じ意見を(ブリーダーよりもかなり理解しやすく!)史嶋さんが提唱されている事を、この「仔犬の社会化」で見つけました。
繁殖家として、ブログで伝えたい事は沢山有りますが、犬舎運営者として意見を述べると、同業者や関係する業界の批判や悪口になりかねないと、ブリーダーは心配。正論だからと言っても、色々な事が起きてきます。
そこで、史嶋さんに引用を申し込み、犬舎運営者として考えている事と共感する意見や、もっと沢山の人に知ってほしい事を「史嶋さんのご意見」として、抜粋をしてご紹介をさせて戴いています。
引用を快く承諾して下さった史嶋さんに、本当に心より感謝しております。
選んでご紹介する内容は、ブリードする側の本音を潜めて抜粋しています。
一人でも多くの皆さんに読んで戴いて、これから仔犬を買おうとしているお友達がいらしたら、ここで読んだ内容を教えて差し上げてほしいと願っています。
私達が言いたいことの代弁として選んだ部分のダイジェストなので、全文では有りません。もっと他に色々面白い記事が沢山掲載されているので、
史嶋さんのブリード
(略)ちなみに僕が飼っていたラブラドールリトリーバーの牝犬はイギリスのガイドドッグアカデミー系統の子を埼玉のブリーダーさんから譲り受けた犬でした。繁殖相手の牡犬は、千葉県警の嘱託警察犬を長年勤めた犬で、ずっと警察犬訓練所で繁殖されてきたドイツ系のトライアル・ポリスドッグ出身の犬でした。
なぜそこには多くの動物シェルターでなければなりません
プロのブリーダーさんなら、こうしたアウトラインブリードはしないと思いますが、僕はラブラドールリトリーバーの訓練性能をより高め、身体能力と従順さを兼ね備えた犬ができるのではないかと期待してあえてこういう繁殖を試みました。
結果は家庭犬として飼う犬としては上々の出来でした。子犬たちは生後3ヶ月程度で、CDII相当の訓練を容易に覚えてしまい、牡犬の一匹は父の後をついで嘱託警察犬に、牝犬の2匹は新しい飼い主さんの訓練でCDXを取得し、他の犬たちもすばらしい訓練性能と温和な性格のとても飼いやすい犬たちでした。 盲導犬も警察犬も使役目的に従って、訓練性能を高めてきた犬たちですから、その子たちが優秀なのは当然のことだと思います。
ただし外観はスタンダードに似つかわしくない、大きな耳と箱口とスクエアな体型が目立つ犬たちでした。
このあたりは外観と犬の性能を両立させるのは難しいと感じました。
ブリーダーは、史嶋さんから戴いたこのコメントを大変感謝して、大喜び。
参考になる面白い大胆な組合せの交配です。
別の欄で、「直子では理想通りの仔犬が生れたが、次の代でははっきりと警察犬タイプと、盲導犬タイプに別れた」とも。
ブリーダー「遺伝の法則には 逆らえねぇ」と唸っていました。ブリーダーの理念、「チャンピオンの子と交配ではなく、「自分が欲しい犬=チャンピオン犬と交配」をしないと、理想通りの仔犬が出ない」の理由と、同じ意見を史嶋さんが述べていたのです。
インブリードは、純血統の形質を固定する方法ですが、遺伝子疾患;親犬の欠点;も強化固定するので、「好ましくない遺伝子の排除に多大な労力を要する危険な交配」。その「排除」…欠陥を持つ犬を交配に使わない、これが一番です。
「純血統の中で、出来る限り遠い交配」、史嶋さんの交配計画は資質骨格のばらつきはあるけれど、健康な仔犬を出す選択でした。
血統書の読み方について別にとりあげて説明をする予定です。
*史嶋さんのブログから写真とコメントをそのまま転載しています。
ジャックラッセルテリアの前、家には紀州犬とラブラドルリトリーバー(ラブラドル犬)という
真っ白と真っ黒の犬がいた。
2匹とも牝でラブラドル犬がお産をしたとき、紀州犬は頼まれたわけでもないのに自ら乳母を買ってでた。
写真はラブラドル犬が散歩に出るときに、紀州犬に子犬たちを託しているところ。
このように社会性の高い犬たちは、家族という群れの中で生まれた子供たちを一致協力して育てることができる。
方法electusオウムを再現しない
自分とは似ても似つかない、たれ耳箱口の真っ黒な子犬たちに寄り添った紀州犬は、きつい目でケージの外を見張っている。
彼女は飼い主家族が子犬に触っても気にしないが、外来者が子犬に手をのばそうものなら、警告も無く咬みつこうとさえした。
子犬たちは、こうして母親と頼りになる義理の大叔母に守られて、初期の社会化を始めることになった。
子犬たちは起きている間は母乳を飲んでいるか、取っ組み合い遊びをしているか、というくらい、くんずほぐれつしてよく遊ぶ。
際限なく取っ組み合い遊びに興じ、お互いに咬んだり咬まれたりしているうちに、自然と攻撃抑制を覚え、本当の意味で甘咬みが出来るようになっていく。
獲物回収犬であるラブラドル犬にとって必須の、獲物を損なわずに持ち帰るためのソフトバイトも、こうして自然に身に着いていく。
取っ組み合い遊びを繰り返すうちに、子犬は甘咬みを覚えるだけでなく、上下関係も構築していく、
この段階で飼い主が介在すれば、人間に対する社会化も始めることが出来る。
子犬は専用の乳房を持たないので、子犬同士の力関係でどの乳房から乳を飲むか決まる。
気の強い子犬ほど良く乳の出る乳房を独占できるため、上位の子犬ほど体格がよくなっていく。
この様に多産な哺乳動物である犬では、母犬と子犬たち相互の関係が、そのまま次世代の上下関係にまで影響していく。
写真の母犬のラブラドル犬は紀州犬が1歳の時、生後2ヶ月で家にやってきた。
食事の時間になると、ラブラドル犬の子犬は何も教えないのに、義理の母となった紀州犬をまねて、座って食事を待つようになった。
この様に子犬は年上の犬の振る舞いを模倣するので、先住犬のしつけや訓練がきちんと入っていれば、新参犬の訓練も順調に行くことが多い。
これも社会化の利点のひとつだといえるだろう。
散歩の後で、日向に置いたパレットにこもって昼寝するラブラドール犬の母子。
子犬の分譲まで親兄弟と過ごした子犬は、高い社会性を身につける事ができるので、新しい家にいってもすぐに家族になじむことが出来る。
可能なら新しい飼い主は、子犬と一緒に寝てやることで、母犬に近い地位を短時間で占めることができる。
あなたのcockateilが男の子か女の子であるかどうかを確認する方法
さみしがって夜泣きする子犬に、毛布でくるんだ目覚まし時計を与えるより、飼主の心音を聞かせながら寝かしてやるほうが効果的なのは言うまでもないだろう。
社会化の重要性
僕は犬を子犬から育てる場合の最重要課題は社会化だと考えています。
犬の祖先の狼は原始的な社会生活を行っていた人間と、社会性と言う共通点があり、幼少期に訪れる社会化期の間なら、異種の動物でも仲間と見なす事が出来る柔軟な社会性があったからこそ、人類最古の家畜になれた、と考えるからです。(略)しかし本当の意味で子犬の社会化に最適な時期、社会化期は生後4ヶ月以前で終了してしまうので、子犬から飼う以上、この社会化期を無駄にしてはいけない、と考えているのです。
では、子犬に大切な「社会化」とはどういう事をいうのでしょうか?
人と犬の成長過程の共通性
社会化は 子犬から犬を飼いたい方、犬の幸福を考えたい飼い主さんには必須の事だと思います。
子犬の社会化を人間の側から定義すると、 「人間が作り、犬が共に暮らす社会は客観的現実なので、そこにある明文化されていない制度・法則・伝統・倫理感に従って行動出来る様に子犬を躾け、子犬が成犬になった時、立派な社会の一員になれる様に育てること全て」 と言う事になると思います。子犬を社会化する過程で、人間と犬の成長過程の共通性が重要な要素になります。
犬も子犬時代に社会化を怠ると、他の犬や人間の痛みを理解出来ないまま育つため、思い切り相手に咬み着き怪我をさせたり、最悪相手を殺したり、つまり犬の社会病質者になってしまう事があります。
(略)…人間の子を幼時からきちんと社会化させずに愛情が少ない環境で育てると、時として他人の気持ちを全く理解出来ない社会病質者(精神病質者ソシオパス)になってしまう事があります。 (略)
僕はこの社会性の欠如こそが、犬が咬傷事故を引き起こす最大の原因だと考えています。(略)「子犬が犬と人間の社会の一員になるための学習する過程」と定義すると、抽象的ながら少しはわかり易くなるでしょうか。
社会性を学習させる過程
では、実際にはどうやって子犬を社会化させれば、飼い主は自分の飼い犬を立派な社会の一員に育て上げる事ができるのでしょうか?
僕の知る限り、この課題を明確に説明している日本語の犬の飼育本、訓練本はまだ見た事がありません。
①犬の場合、幼少期に上位自我に相当する部分は、主に母親が受け持っています。離乳以前の子犬にとって母犬は母乳と言う食事を与え、糞尿の処理を行い、自分を守護してくれる絶対者だからです。
②多産である犬では、子犬の兄弟姉妹が、もっとも近しい、そして最初の社会化の相手になります。子犬たちは眼が開き、巣穴の中で動き回れるようになると、食事時と寝ている時以外は、際限なくお互いに咬み着いたり、咬み着かれたりして取っ組み合い遊びを始めます。この過程で初期の社会化が始まります。(略)本当の意味の甘咬みを覚え、同族である犬に対する攻撃抑制を身につけて行くのです。
③子犬が外に出て遊べる様になると、複数の犬を飼っている家なら、若い年上の犬が子犬の相手を務めるようになります。ここで子犬は大人犬を相手に取っ組み合い遊びを繰り返し、相手を咬み殺す事の出来る強靱な顎と牙を持つ大人犬になっても、むやみに身内に怪我をさせずに付き合えるように、より高度な攻撃抑制を学んで行きます。こうして子犬の中で犬全般に対する社会化が進んでいくのです。
④さらに飼い犬では 犬の飼い主や繁殖者が、適切な時期に子犬の社会化の現場に介在すれば、犬対犬で社会化を経験した子犬は、人間に対しても社会化され、甘咬み(抑制された咬み)が出来るようになっていくのです。
衛生管理優先管理の弊害
近年犬の量販店で行われている衛生管理優先の個別飼育は、子犬からこの初期の社会化の機会を奪ってしまいます。
最悪の場合は、母犬や兄弟と過ごす期間が短すぎたため、全く咬みの抑制を知らない子犬が初心者の飼い主に売られる事もあります。
それが小型でも咬む力の強いジャックラッセルテリアの様な犬種だったらどうなるでしょう?飼い主はカワイイ外観と、日々流血を引き起こす凶暴な子犬のギャップに耐えかねて、飼育を放棄してしまう事も珍しくないのです。
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